大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)1169号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件土地が原告の所有であるところ、被告がその地上に別紙目録記載の建物を所有し、もつて右土地を占有していることは当事者間に争いがない。
そこで被告の抗弁につき按ずるに、<証拠>を総合すれば、丸山寿夫は昭和二六年五月二三日本件土地を含む七四坪六合一勺を原告から賃借し、本件土地上に建物を建築所有し、昭和二七年二月一一日摂津電気工事株式会社を設立し、自らその代表取締役となり右建物で電気工事請負、電気器具販売業を営んでいたが、昭和三二年四月右建物を改築して本件建物となした上、同年七月八日右会社名義で所有権保存登記手続を経たこと、右土地の賃料は右会社設立後は同社振出の小切手で支払われることが多く、原告も何ら異議なくこれを受領していたもので、その後昭和三六年六月一日原告と丸山との間で右土地の賃料をその後一年間は坪当り一ケ月金七〇円、昭和三七年六月一日以降は坪当り一ケ月金八〇円とすることに改訂したこと、右会社はその以前昭和三三年一二月六日解散したが、その際被告に対し負担していた債務の一部弁済のため本件建物を代物弁済として被告に譲渡し、昭和三四年六月一八日その旨被告のために所有権移転登記がなされたことが認められる。そうすると丸山寿夫は右訴外会社に対し本件土地を転貸していたもので、その点は原告の承諾するところであつたが、(中略)右会社が本件建物を被告に譲渡した際同時に本件土地の転借権も被告に譲渡されたものと見るべく、但しこの点について原告の承諾がないことは被告の自認するところであり、被告は右転借権の譲渡を受けると同時に、原告に対し本件建物の買取請求権を取得したものといわなければならない。
しかしながら、<証拠>によれば、右土地の賃借人丸山寿夫は昭和三六年一二月一日から昭和三七年八月末日の約定賃料合計金四九、二三六円を原告から催告を受けながら支払わなかつたため、右賃貸借は同年九月二五日解除され消滅してしまつたことが明らかであり、然らばその際同時に被告の右買取請求権も消滅したものというの外はない。もつともこのように解すると、被告は自らは全く関与しない丸山の賃料不払という事実によつて買取請求権を喪失するという予期しない不利益を蒙る結果となり、一見その保護に欠けるうらみがあるかのようではあるが、建物取得者の敷地賃借権の譲受又は転借は、買取請求権を行使する時まで、賃貸人の承諾さえあれば同人に対する関係において有効となるべき状態であることを必要とするのであつて、これを若し土地の賃貸借が賃借人の賃料不払等の債務不履行のため解除された後にも、建物取得者は依然として建物買取請求権を行使しうるとせば、賃借人はもともと右債務不履行によつて賃貸借を解際されれば、自らその地上に所有する建物を収去して土地を明渡すべき責を負うに拘らず、右解除以前に地上建物を第三者に譲渡しさえすれば、自らは建物収去義務を免れると同時に、賃貸人に予期しない第三者から買取請求権を行使されて、右建物を買取らざるを得ないこととなり、その不当なることは論をまたない。結局前記のような被告の不利益の救済はまた別個の方法によつて考えるの外はないというべきである。(新田圭一)